コーヒー


コーヒーを飲み始めたのは、高校に行って下宿を始めた頃だ。最初は紅茶を飲んでいたのだが、試験勉強で徹夜をするためには、コーヒーの方がずっと目覚まし効果が高いことが判ってから飲むようになり、以降コーヒーは手放せなくなってしまった。


インスタントコーヒーはドリップコーヒーとは別物で、味も眠気覚ましにもドリップにはかなわない。豆を挽いてペーパードリップで入れていたのだが、最近は、ブリックパックのような一回分づつの簡易ドリップパック製品が出てきて、お歳暮お中元にも使われるようになった。


実のところ、ドリップコーヒーを飲むのは女房の実家も含めて俺だけなので、日持ちすることもあり大量に集まってくるのである。夜のコーヒーを控えるようになってから、飲む回数も一日一杯程度になってしまい、結局パックコーヒーばかり飲む羽目になっている。

パック品は、どうも豆に比べるとイマイチ味が落ちる気がする。蒸らしが上手く出来ないせいかもしれないのと、香りが少ない。何より、豆を挽くという行為が省略されてしまうのが問題である。


習字なんかで良く言われることなのだが、墨を擦る事によって心を落ち着けるのが重要で、墨汁を使ってパパッと書くのは宜しくない。日本人は何でもかんでもナントカ道にしてしまうと言われるが、過程を楽しむのが好きなのだと思う。


コーヒー豆を選び、水を選ぶ。挽く香りを楽しむ。お湯の沸くのを待ち、最初の一差しで豆を蒸らし、粉が膨らむのを眺める。細心の注意をかけて、湯をゆっくりと注ぎ、淹れたコーヒーの香りを楽しむ。サーバーからカップに移し、菓子の甘味とコーヒーの味を楽しむ。


楽しみを貪欲に求めるのが「通」というものなのかもしれないね。