昔語り(炊事編)

物心ついた頃からガスコンロはあったが、小鍋や小さなフライパン、天ぷらを揚げる等の小径の調理器具用であって、家族用のご飯や煮物をつくるのは、土間にある薪炉であった。構造的には、高さ0.5m x 1.8m x 0.8m の直方体の焼き物で、上部に均等に2つ円形の穴が空いておりそこに鍋釜を置くようになっている。側面に二カ所横開きに開ける所があって、そこから薪をくべるように出来ている。


以前にも書いたが、クズ竹を焚き付けにして薪に火を付けたりするのが妙に楽しくて、火が燃えた後も色々と実験と称して悪さをしたものである。空き缶に釣り用の錘を入れて溶かすのが出来るのを知ったのはこの頃。平べったくなった鉛の板を丸めて粘土代わりにして怒られた記憶がある。


ガスコンロは気軽に火を使えるので、利用頻度は高かった。こっちは、板の間の方に設置されている。順番的には土間があって隣が板の間になる。土間にある古い水場があって、もう一つシンク(単純な物だが)あってその隣にガスコンロがあるといった形。


今では殆ど見ることが無いが、マッチに火を付けてガスコンロにかざし、栓をひねってガスを出して火を付けるのが主流で、電池式や圧電素子で火花を散らして火を付けるタイプが出てくるのはずっと後になる。


大体5歳くらいにもなるとマッチで火を付けれるのは当たり前として、昼になると5歳児を留守番にして、みんな仕事に出かける(と言ってもお隣さんの魚の加工場に居るのだが)ので、おかずの目玉焼きとかインスタントラーメンとかを自分で作って食べていた。今考えると、結構めちゃくちゃ危ない事をしていたな。


全然関係ない話になるが、当時は昼にカギをかけている習慣が無く、誰もいないところに遊びに来たご近所さんが入り込んで、勝手にお茶を容れて飲んでたりしたものである。ある日知らないおじさんが訪ねてきて、隣の加工場に母を呼びに言ったときに「どんな人」と聞かれて「俺より大きい人」と答えたのが年寄りの笑い話のネタに未だに使われて閉口する。